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AFTER SESSION with Tomoki Sukezane VOL.1 

2023.04.07feature

AFTER SESSION 

with Tomoki Sukezane

2021年から祐真朋樹をクリエイティブディレクターに迎え、新時代を築きつつあるランバン コレクション メンズ。彼はいかなる手法で、パリ最古のクチュールメゾンのエッセンスを再解釈し、現代にアップデートさせているのか?そしてクチュリエ由来のクラフツマンシップを貫き続けるランバン コレクションは、いかなる技術によって彼のこだわりと志を具現化させているのか?
2023年春夏コレクションが店頭に並んだ今、アフターセッションという形で両者のものづくりを振り返ってみよう。まずはブランドの隠れ名品と名高い、サマーニットから。

VOL.1 涼やかなサマーニットに秘められた、熱いこだわり

AFTER SESSION with Tomoki Sukezane

世界一のニットってどんなものだろう?

――アイコン的な存在である「パリスシングルトレンチ」とか「パブロジャケット」の影に隠れがちですが、実はランバン コレクションはベーシックなニットの評判が非常に高いらしいですね。

祐真朋樹(以下祐真):そうなんですよ。一見地味ながらも、着てみれば一瞬でわかるそのよさを、皆さんへようやく伝わり始めているというか。

LANVIN COLLECTION(以下LC):祐真さんからは「ハイゲージセーターの中で、日本一いいものをつくりましょう。すなわちそれは、世界でいちばんいいものを目指すということです」という、非常にやりがいのあるお題を頂きました。 

祐真:ランバンというブランドを考えたとき、やはりものづくりの核となるのはフランス最古のクチュールメゾンならではの品格、きちんとしたイメージだと思うんです。そこでなるべくボタンを見せない比翼仕立てや、ジャケットに合わせやすいやや襟位置の高いクルーネックなど、デザインの細部にこだわっています。ぼく自身もシーズンを問わず、よく着ています。

SOMERSET FLY FRONT POLO KNIT
SOMERSET FLY FRONT POLO KNIT

SOMERSET FLY FRONT POLO KNIT ¥39,600

リビルドされたハイゲージニットの概念

――確かにランバン コレクションのニットは、襟の表現が絶妙ですよね! しかし今季のサマーニットからは、その中でも特に上質な雰囲気が漂っています。

祐真:素材には徹底的にこだわってもらいました。今季ぼくが掲げたテーマは〝グランバカンス〟ですが、リゾートといっても単なるカジュアルにしてはいけない。世の中に柔らかなハイゲージニットはたくさんありますが、夏場着るうえではどうしても弱点があって、すぐにヘタレたり伸びてしまうし、体のラインを拾ってしまうので、若々しく見えない。今回はそういう弱点を解消した、ハリコシと柔らかさを併せ持ち、しかも上質な光沢感もあるニットを目指したんです。

LC:祐真さんから頂いたこのお題をクリアーするためには、既存のハイゲージニットの概念を一回捨て去って、再構築する必要がありました。そこで私たちは270番双糸というものすごく細い糸を5本束ねて、さらにそれを2本で撚るという、ものすごく凝った糸をつくりました。

祐真:非常に細い糸を束ねて撚って、わざわざ太くしているわけだね。

LC:その通りです。出来上がった糸はだいたい30番手程度の太いものになります。繊維がギュッと詰まった糸で編んでいますから、ハリコシはしっかりあるものの、270番双糸ならではのシルクのように自然な光沢も兼ね備えている。長いことハンガーにかけても、ほとんど伸びないんですよ。

――発色も実に見事ですね。

祐真:これはちょっと感覚っぽい話になっちゃいますが、ベルエポック期にパリで活躍していたアーティストたちのバカンスからヒントを得て、色を決めました。このニットは『SOMERSET(サマセット)』と名付けました。僕がサマセット・モームの作品『月と6ペンス』が好きだからです。

SOMERSET SWEATER
SOMERSET SWEATER

SOMERSET SWEATER ¥35,200

細部に散りばめたクラフツマンシップを紐解く

――袖を通したときに感じるのが、今っぽい少しゆったりしたシルエットなのに、決してルーズに見えない点です。

祐真:これなら1枚で着たときにキリッと見えますし、ジャケットにも合わせやすい。

LC:ここもまた祐真さんのこだわりポイントで、夏場に1枚で着てもサマになるセミドロップショルダーのシルエットにしつつ、ちゃんとしたテーラードジャケットにも合わせられるようにしたいと(笑)。なので単純なボックスシルエットではなく、袖山をしっかりつくるとともに、カマを若干上げ気味にして、ジャケットの中でシワになりにくく設計しています。

――アームホールを広げすぎないようにしているわけですね。

祐真:既存のニットポロみたいに、襟がだらしなく伸びないようにとも伝えました。つまり〝伸びにくいリブ〟(笑)。

LC:普通に考えるとリブって伸びるものですから(笑)、〝伸びにくいリブ〟ってなんだろう・・・と考えたときにたどり着いたのが、いわゆる「ミラノリブ」です。これはジャケットなどに使われる素材で、リブ編みと袋編みを組み合わせた編み方。これを襟に採用したことで、まるでドレスシャツのように上品な見た目が生まれたんです。それでいて表情はとても柔らかい。これは巷のポロニットとは別次元ですよ。

――なんと襟だけミラノリブにしているとは! ものすごいこだわりようだ・・・。

LC:とはいえ伸びないと着にくいですし、普通のミラノリブは無理に伸ばしたら伸びっぱなしになってしまうので、スパン糸という伸びる糸を入れることで、しっかり伸縮するようにつくっています。 

AFTER SESSION with Tomoki Sukezane

祐真:もちろんスーツにだって合わせられますが、ジャケットを着られないような暑い日は、これにシアサッカーのトラウザースくらいを合わせれば、正装とまではいかないものの、ある程度ちゃんとした場所にだって行けるんじゃないかな? ぼくは最近ゴルフにハマっていますが、今季の半袖ニットはプレイのときに着るのにも持ってこいです。汗をかいてもシャキッとしたシルエットをキープしてくれるし、着心地も抜群。こういう素晴らしい名品ができたのは、ランバン コレクションのものづくりの賜物ですよね。

LC:いや、祐真さんのこだわりと志の高さについていくように頑張っています(笑)。

SOMERSET SWEATER ¥35,200
SOMERSET FLY FRONT POLO KNIT ¥39,600

イタリア・エミルコットーニ社の『Q270』という極細コットン糸を超高密度で編み上げたニットは、上質な光沢感とハリコシを兼ね備えた、サマーニットとして理想的な存在。ほどよくゆったりしたシルエットや絶妙な五分袖、美しいニュアンスカラーなど、ランバン コレクションならではのアレンジが光ります。

SUMMER KNIT ALL

VOL.2