AFTER SESSION with Tomoki Sukezane VOL.3
2023.05.12feature
AFTER SESSION
with Tomoki Sukezane
2021年から祐真朋樹をクリエイティブディレクターに迎え、新時代を築きつつあるランバン コレクション メンズ。彼はいかなる手法で、パリ最古のクチュールメゾンのエッセンスを再解釈し、現代にアップデートさせているのか?そしてクチュリエ由来のクラフツマンシップを貫き続けるランバン コレクションは、いかなる技術によって彼のこだわりと志を具現化させているのか?
2023年春夏コレクションが店頭に並んだ今、アフターセッションという形で両者のものづくりを振り返ってみよう。今回は、1990年代に大ヒットを遂げた名作シューズの復刻版だ。祐真朋樹のディテールへの探求心は、時代をも超越してさらなる深みへ。
VOL. 3 モードでトラッドな90年代の名作靴を復刻!
蘇ったシルバノ・マッツァ
――さて、今回はN.GWというブランドに別注したというシューズについて振り返ってもらいますが・・・これ、ものすごく見覚えがありますね(笑)。
祐真朋樹(以下祐真):1990年代に一世を風靡したシルバノ・マッツァというブランドはご存知ですか?
――もちろんです。というか、日本では祐真さんが火付け役になったようなものですよね?
祐真:プラダやヘルムート・ラング、ロメオ・ジリといったブランドが人気を集めていた90年代半ば、それらすべてに合わせられる唯一のシューズとして、突如としてここの靴が登場してきたんですよ。あとはグラネロ。
――うわあ、懐かしいですね(笑)。
LANVIN COLLECTION(以下LC):それまで靴ブランドといえばノーサンプトン系かオールデン、J.M.ウエストンくらいしかなかった頃、シルバノ・マッツァの登場は衝撃的でしたね。
祐真:本当にものがよかったです。現在はマッツァそのものは存在しないのですが、当時のインポーターさんから、発足メンバー3人のうちふたりが戻った新ブランドの情報を伺って、ならばぜひやりましょうと。そうしたらイタリアなのに、たった1週間でサンプルが上がってきた(笑)。木型といいレザーといい、ほぼ当時と同じですよ。
LC:モードの文脈で登場した靴ではありますが、もともとはアメリカのトラッドシューズがベースなんです。サドル部分のビーフロールと呼ばれるステッチとか、コードバンのように磨き上げたカーフは、まさにその象徴ですよね。
祐真:当時、ヨーロッパではこの靴をアイビーっぽいスタイルに合わせて〝エクストリーム・アイビー〟なんて呼んでいたね。こうしたカッティングエッジなトラッド観は、まさに現在のランバン コレクションにもハマるのかな、と。基本的にはほぼ忠実に復刻しているのですが、配色に関してはブラックとネイビーをコンビネーションにしたりと、フレンチっぽいアレンジをさせてもらいました。
LC:当時のシルバノ・マッツァそのものといっても過言ではないのですが、親指のつま先部分のカーブだけ、当時のグラネロ風なんですよ。
――そんなところにまで、細かすぎるこだわりが(笑)。
レザーサンダルにもマニアックなアレンジが
祐真:このファクトリーはかなり器用でして、サンダルもいいものができるんです。これもランバン コレクションのクロージング同様、クラシックなデザインながらステッチを露出させないように仕上げて、ストラップはベルクロで留める仕様。ぼくはそれほどサンダルを履かないんですが、これはブラックのドレススタイルに合わせてみようと思っています。
――確かにカジュアルなデザインですが、ドレスにも合う表情ですね。
祐真:ベースがトラッドなので、ギンガムチェックのトラウザースとか、シアサッカーのセットアップあたりに似合うよね。でも、意外だけどジーンズやワークジャケットとの相性もいいんですよ。
LC:実はランバン コレクションとしては珍しいのですが、今季はフレンチヴィンテージっぽいカジュアルなアウターもつくっているんです。これにも祐真さんならではのこだわりがあってですね・・・(以下略)。
――いやあ、とことんマニアックにこだわりますね(笑)。
祐真:微に入り細に入り、細かなやりとりを重ねてつくっています。大袈裟なデザインを前面に掲げるんじゃなくて、こういったさりげない工夫を積み重ねていくことが、ランバン コレクションらしさに繋がっていくのかな、と思うんですよね。
SLIP ON LOAFER ¥99,000
STRAP SANDALS ¥71,500
イタリアを代表するビッグメゾンの生産を手掛ける実力派ファクトリーが創設した、新しいブランドN.GW。こちらとランバン コレクションとのコラボレートによって生まれたスリッポンは、1990年代のシルバノ・マッツァを彷彿とさせるデザイン。レザーストラップサンダルも、ほどよいモードテイストを感じさせる、見事な完成度です。ドレッシーなスーツからラフなジーンズスタイルまで、幅広い装いにマッチするでしょう。